建設工事従事者の安全と健康確保にどう向き合うか?

施工管理技士

令和5年6月に「建設工事従事者の安全及び健康の確保に 関する基本的な計画」が国土交通省より発表されました。その内容を分かりやすくまとめました。

1. 建設工事従事者の安全と健康の確保の現状と課題

建設業界では、労働災害の発生が長期的に減少傾向にあります。これは労働安全衛生法の改正や建設業者の自主的な労働災害防止活動の結果です。しかし、一人親方や自営業主、家族従事者を含む建設工事従事者全体では、年間約350人の命が失われています。これを受けて、建設業における災害の撲滅に向けた取り組みが求められています。

2. 建設工事従事者の安全と健康の確保の推進に必要な環境整備

建設工事従事者の安全と健康の確保には、公共工事だけでなく全ての建設工事について、労働安全衛生法に基づく最低基準の遵守と、建設業者の自主的な取り組みが重要です。その前提として、請負契約における適正な請負代金や工期の設定、建設工事従事者の処遇の改善や地位の向上が求められています。

3. 一人親方等への対応の必要性

一人親方や自営業主、家族従事者(以下、一人親方等)は、他の関係請負人の労働者と同じような作業に従事しています。そのため、一人親方等の安全と健康の確保について、特別な対応が必要とされています。

4. 建設工事従事者の処遇の改善等を通じた中長期的な担い手の確保

建設業界では、技能労働者の賃金水準は上昇傾向にありますが、他産業の労働者と比べてまだ低い水準にあります。また、他産業では一般的となっている週休二日の確保が十分ではなく、総労働時間が長くなっています。これらの問題を解決し、建設工事従事者の魅力と安全性を向上させるためには、以下のような取り組みが必要です。

1. 適正な請負代金と工期の設定

建設業の請負契約では、不当に低い請負代金や不当に短い工期が設定されると、技術的に無理な手段が強いられ、適正な施工が確保できず、労働災害や公衆災害の発生につながる可能性があります。そのため、市場の労務や資材等の取引価格、施工の実態等を適切に反映し、建設工事従事者の安全及び健康に関する経費を適切に確保することが重要です。

2. 設計、施工等の各段階における措置

建設工事は、気候、地形、地質等の自然条件に大きく左右されるため、設計段階では、建設工事の現場の施工条件を十分に調査し、安全と健康の確保を考慮した施工方法等を検討することが重要です。また、施工段階では、元請負人の統括安全衛生管理のもと、関係請負人がそれぞれの役割分担により漏れなく安全措置を講じる必要があります。

3. 建設業者及び建設工事従事者の安全及び健康に関する意識の向上

元請負人及び下請負人の安全や健康への意識が低いと、不安全な状態が看過され、適切な作業手順を踏まないといった不安全行動を誘発するおそれがあります。そのため、建設工事の現場における労働災害が減少していることによって、作業に潜む危険に対する感受性が低下していることを意識し、安全意識を高める必要があります。

これらの取り組みを通じて、建設工事従事者の安全と健康を確保し、建設業界を魅力的な仕事の場をより多く作っていきたいですね。

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